会社合併と労働組合の
組織問題についての提言
新会社に全損保日動外勤支部を築く有志の会のよびかけ(全文)

 全損保日動外勤支部組合員の皆さん。10月に予定される会社合併を前に、3月11日開催の分会代表者会議において、「全損保脱退」の方針を支部執行部が提起し、組織論議をおこなっていくこととしています。しかし、私たち有志は、全損保にとどまることこそ最良の選択と考え、皆さんがともに間違いのない選択をされるよう心から呼びかけるものです。
 
私たちをとりまく情勢と合併への不安
 私たちは、日動社と東海社の合併に向けた準備が着々と進むにつれ、様々な情報が遮断され、働く環境や労働条件のすべてが東海社に「片寄せ」される現実に直面しています。 合併を通じて「東海社は契約係社員を喜んで迎えてくれるのか」「特社採用を閉ざすのではないのか」「高齢者=嘱託は無理やり代理店にさせられるのではないか」「収保が少ない社員は切り捨てられないか」など、語れば語るほど尽きない声が職場を覆い、新会社に対する不透明感や雇用と生活の不安がますます大きくなっているのではないでしょうか。
 いま、私たちに必要なことは、全組合員があらゆる角度から正しい情報を入手・共有し、会社合併がなぜ行われ、合併前・合併時・合併後にどんなことがもたらされるのか、を把握し、起こりうる事態に対し、どんな行動をすべきか、を民主的に、納得と合意のもとに決めていくことです。

合併にともなう経営の戦略と際限ない「合理化」
 金融・保険「自由化」の荒波の中、先行各社の統合・合併に揺れた日動経営は、生き残りをかけ東海社との合併を決定しました。そのもとで、事業費率削減を進め、従業員には容赦なく我慢を押しつけています。合併とは、莫大な労力と資本の投下が必要とされますが、同時に、「シナジー効果」を狙った徹底した「合理化」が、合併前、合併時、合併後を通じて進められるものです。
 また、合併社双方の企業規模・資産力が大きく異なる場合は、「小=『吸収』される側」は、自社の歴史も捨て、事業形態、企業文化のすべてを「大=『吸収』する側」に合わせることになります。「小」である日動社の従業員側にとりわけ大きな変化がもたらされることは、損保ジャパンにおける日産、大成の仲間の経験が教えています。  日動社と東海社の合併では、経営として、これまでの他社の合併の教訓も最大限いかしながら「いかに効率的に合併を進めるか」を考えていることは想像に難くありません。「対等合併」という言葉やトップカンパニーの「ブランド意識」などは、私たちの将来をバラ色に描く保証にはなりません。 合併の現実は、日動社の就業規則や職場運営、労使慣行やルールなどを全面的に「東海流」に作りかえ、私たちには、その受け入れが迫られていくのです。私たち契約係社員の不安の根本は、このような経営者の、「小=『吸収』される側」に押付けられていく「合理化」にあるのです。
 
経営の思惑をかなえるために組織攻撃がある
 また、「自由化」のもとの「合理化」競争は、「もう削るところが見当たらない」といわれる厳しいものであり、各社とも、遠慮なく「人」をコスト削減のターゲットにしはじめています。わが国では、会社都合で、労働者を一方的に解雇することは許されませんが、現実には、「早期退職」、「転職支援」などの“制度”や“退職するしかない風土”がつくられ、大量の「退職者」が生まれています。新会社の事業費率の目標は32%台であり、厳しい「合理化」が待ち構えています。私たちが、声を上げ、言いなりにならないことこそ、自らの雇用と生活を守る出発点です。労働組合はその砦です。
 労働者と経営者の間には労働契約が結ばれていますが、時として、経営は権力を一方的に振りかざします。その横暴をさせないため、わが国の憲法では労働者に団結権が保障され、労働組合をもつ権利があります。しかし、これまでの統合・合併を通じ、私たちは、経営が、全損保に組織攻撃をしかけてきた事実を目のあたりにしました。この事実は、経営は、自らの思惑を実現するため、言いなりになる従業員をつくり、互いの情報交換を遮断するため、労働者の主張の主体となる労働組舎に支配・介入するという教訓を残しています。
 
損保ジャパンヘの合併で仲間が経験した事実
 身近にあった損保ジャパンの合併では、「ひとつの組舎」論のもとでの組合組織への介入・干渉により、ある人は新会社での差別を恐れ、ある人は一瞬の希望を描き、ある人は、大勢に巻きこまれ、大成、日産支部の多くの仲間が全損保から引き離されました。 新労組の掲げた「新しい組合像」なる文には、「3社の労働組合のこれまでの活動を踏まえ、それぞれのよいところが継承されるよう、『白紙』から論議して新しい労働組合を作る」としるされました。 しかし、語られつづけた「小= 吸収される側」の「合理化」への不安は現実となり、一人ひとりが切り離され、拠り所を持たず、主張の主体への結集を失うなかで合併前後で1000人を越える規模で数多くの仲間が会社を去っています。
 契約係社員への厳しい出方が予想される新会社で、ひとたび、バラバラになれば、大海に浮かぶ木の葉のように、何一つ知らされず、何が起きているのかもわからず、ただ渦に巻き込まれていくだけです。

主張の主体があればこそ
 このような事実は、新会社の中でバラバラになれば私たちもまったく同じ状況に陥るということと同時に、自らの組織を持つことが、何よりも大事であることを教えています。「合流する側」にとって、全損保の一員として契約係社員の支部であること=すなわち全損保日動外勤支部であることが、もっとも理に適う、現実的な道になります。  全損保の仲間はかつての4万人から、統合・合併のもとの組織攻撃で1万5000人に減少しています。しかし、全損保に残った仲間には、自らを主張する主体となる組織があり、何かあれば必ず連絡が取れ、理不尽な攻撃には知恵を出し、手を取り合える、私たちが毎日を過ごし働く基盤を保つことができています。  
選択への介入は許されない
 今後、経営者は、全損保からの「脱退」を狙い、甘い言葉で幻想を語り、またコンプライアンスを悪用し処分をちらつかせ、言いなりになる従業員づくりへの攻撃を強めることと思います。コンプライアンスの組織介入への悪用はまさに不当労働行為であり、民主的で自由な論議を確保するため、支部として毅然とした姿勢で経営の監視が必要です。
 3月3日、日動経営はビジネスモデルなる制度改定を提案してきました。内容をみれば、契約係社員制度全面にわたる効率化がもたらされ、「自らの選択」で転職していく制度も含む制度改悪・賃金削減提案になっています。本来、私たちが求める将来像とはほど遠く、すべての契約係社員が働こうと言う意欲を喪失させ、将来に失望感まで持たせる内容となっています。組合の組織問題が将来不安に結びついて揺れ動いていれば、最も大切な制度提案に立ち向かう態勢がとれず、この期に乗じた、経営の組織への介入も警戒を要します。組合組織のあり方を決める論議は、組合員の将来を左右する問題として、会社の介入を断じて許さぬ組合の自治のもとで進めることが重要です。

自信と誇りを持って新会社に日動外勤支部を築きましょう
 私たち契約係社員は日動火災の社員として雇用され、顧客からの信頼関係を大切に、顧客の心を経営に伝え、よりよい商品を開発する情報を提供し、整斉と仕事をして日動火災を支え、生活の基盤を確保してきました。これからもそして将来にわたっても私たち契約係社員としての使命は決して変わることはありません。自らの将来を左右する問題について、毅然とした姿勢で、経営の介入を許さず、自信と誇りを持って組合自治のもとで論議していくことが重要です。確かな選択をし、自らの明日のために、ともに力をあわせて新会社に全損保日動外勤支部を築いていきましょう。

2004年3月11日
「新会社に全損保日動外勤支部を築く有志の会」
佐藤修二、野沢公一、竹田典央、田中健喜、溝渕修作、梅津丘、奥田二郎、川田隆彦





このページのTOPへ